ほんとのほんと

一浪&三留したアラサーダメ人間が社会と自分とのギャップに半笑いで半ば諦めながら立ち向かって(?)ゆくブログ。  精神年齢は最近19歳になった。

マラソン大会でイケメンに声をかけられた話。

過日、都内某所で開催されたハーフマラソンの大会(といっても「練習の延長」的な意味合いが強いもの)に参加してきた。

 

あくまで着替えやすさ重視のダサダサな格好で家を出て、電車に揺られながら「え、今から21キロも走るん……?」と急に我に返って憂鬱になるわたし。

ずっとサボりまくっていたので20キロ以上を走るのは半年ぶりだし、2日前ハイヒールで2時間も歩いたせいでふくらはぎに痛みがあるし、まだ暑いし今日はゆっくり走ろう……。

そんな感じで緊張感なくスタートするも、7キロ地点くらいですでに「あ、そうだったわー、ハーフってきついんだったわー」と途方に暮れはじめ、16キロ地点くらいで「10月フルマラソンって絶対無理やん。なぜエントリーした、6月のわたし」と自分にキレ始める始末。そんなわけでタイムはいまいちだった。つらい。

 

よぼよぼと記録証を受け取る。順位を見ると女子の中では半分よりは前のようだからまあよしとする。まだ夏だもんね。みんなも走れないよね。

 

受付前の荷物置き兼休憩所のようなところで足を投げ出して座る。周囲は結構わいわいがやがやとしている。マラソンの大会はおひとり様の参加が多いが、仲間同士、カップル、夫婦で参加している人たちも少なくなく、彼らが大会をにぎやかなものにしてくれる。夫婦らしき男女が並んで走っているさまをその日も何度か見かけていた。

いいなあ。

まあ、並んで走りたいとは言わないが、それでも、大会に一緒に来て、一緒に帰る相手がいるというのは、一つの理想形ではある。

 

そんなことをぼーっと考えていたら呼吸も落ち着いてきたので、わたしは立ち上がってアキレス腱のストレッチを始める。斜め後ろにいた人も、同じようにストレッチし始めた。と、その斜め後ろの人がいきなり

「どのくらいで走られたんですか」

声をかけてきた。

 

「!」

 

マラソン大会で知らない人から声をかけられるのは初めてである。びっくりして振り向く。と、そこにはなんと若いイケメンが。

 

「あ、えと、2時間〇〇分です」

 

突然のイケメン登場にわたしはしどろもどろになる。スポーツマンらしく日に焼けた肌に、無邪気でちょっといたずらっぽい笑顔。気取らない黒のポロシャツ。イケメンはにこにこしている。あっ、そうか、こういう時は質問のお返しをしないといけないのだな。

 

「そちらは……? もう着替えが済んでるってことはずいぶん前にゴールされたんですよね?」

「僕は26分で。あ、1時間26分でした」

「えっ。早い!」

 

普通に本当に早い。まだ気温は暑かったと思うのだが、こういう人たちには関係ないのか。聞いてみると、もともと陸上をやっていたという。「今は趣味程度で……」とたどたどしく言うけれど、趣味だろうとちゃんと努力を続けていないとそのタイムにはならないように思う。えらい。

 

なぜ数十分も前にゴールした人がまだここにいるんだという疑問を抱かないでもなかったが、わたしは素直に感心してしまい、なぜ自分が話しかけられているのかよくわからないままテンションだけ上がってきて、おざなりにストレッチを続けながら話を続けたところ、そのイケメンが千葉県出身なこと、現在はこの近辺に住んでいること、元同業者だが2回目の転職で他業種の今の会社に入ったこと、給料も上がって仕事も楽しいし転職してよかったと思っていること、などがわかった。

 

せっかくこの場で声をかけてくれたのだからもっとマラソンの話をすべきだろうと思いつつ、その「元同業だったが転職に成功した」という話にわたしはめちゃめちゃ惹かれてしまい、(うわ、めっちゃ食いつきたい! でもここでそんな話題にがっついてはダメな気がする!)と内心葛藤しているとイケメンが、

 

「今おいくつなんですか」

 

と聞いてきた。

おお! その質問はわたしに興味があるということだろうか。

勝手にポジティブ解釈してときめきスイッチが入り、一人テンションが急上昇するわたし。

こんなところに出会いがあるとは。人生捨てたもんじゃない。とりあえず転職の話は置いておこう。マラソンやっててよかった。いや、出会いを求めて走っているわけじゃないが。しかしもしかしたら憧れの「二人でマラソンに行く」が叶う日も近いのかも。LINE交換して、仲良くなったらそれから転職の話を教えてもらおう。

とさまざまな欲望が入り混じった自分でもよくわからない感情を抑えて

「えっといま27なんですけど——」

と言いかけたところでイケメンが「あっ」というふうにあさっての方向へ目をやった。えっとわたしも振り向くと、更衣室のほうからおしゃれでかわいらしい女の子が出てきたではないか。うっそー。と瞬きしている間にイケメンは彼女のほうへ少し手を挙げ、そのまま行ってしまった。うっそぉ。

 

膨らみかけた感情がほんの一瞬で「しゅん」としぼみ切ってしまった。

状況についていけず間抜け面で立ち尽くすわたし。

 

えー。

何だったんだ今のは。

どういうことだよイケメン。紛らわしいことするなよもう!

 

ゆっくりと努めて我に返ると、ああなるほど、だから数十分前にゴールした人がまだこのあたりにいたわけだということがわかってくる。

つまりは女の子を待っている間の暇つぶしで声をかけただけらしい。

やり場のないもやっとしたさびしさの行き場を見つけられず、もやもやしたまま貴重品預り所に荷物を取りに行く。もやもやしたまま更衣室へ行き、もやもやしたまま着替え、自分の服装のダサさに気づき、益々もやもやして一人とぼとぼと帰った。

おわり。

 

 

 

ここまで読んでいただいた方は「えっ、結局何もないのかよ」ともやもやしていらっしゃると思うが、安心してほしい。書いている本人が一番もやもやしている。申し訳ないけれどちょっとこれはどうしようもない。本当に「え、ここで終わり?」な感じはまるで恩田陸の短編みたいだ。恩田陸の短編のモヤモヤ感は個人的には好きだけれど、リアルでやると消化しきれないことが分かった。

 

あと、「結局は“ただしイケメンに限る”の話じゃないか」と憤られた方もいるかもしれないが、それも安心してほしい。ハーフマラソンを1時間20分台で走れれば、誰でもいい感じに体は引き締まって肌も健康的に見えるし自信もついてハツラツとするので、だいたいみんなイケメンっぽく見えると思う。お試しあれ。

 

 

さて。この日の帰り道は自分のダサさが本当に身に染みたので、これからはおひとり様のマラソン大会もちゃんと女子らしさを忘れず参加しようと強く反省しました。たとえぼっちでも世界で一番自分がかわいいと思えれば女子は無敵だが、ダサい恰好をしていればみじめさに拍車がかかるだけなので。

はあ。つらい。