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ほんとのほんと

一浪&三留したアラサーダメ人間が社会と自分とのギャップに半笑いで半ば諦めながら立ち向かって(?)ゆくブログ。  精神年齢は最近19歳になった。

セタブンマーケットに行ってみた話

読書

話は3月にさかのぼる。

以前、尾道へ行った記事で、ふしぎな古本屋さんに出会ったことを書いた。

honto-no-honto.hatenablog.com

記事で書いてあるとおり、わたしは吉田篤弘さんの『圏外へ』という小説を買ったのだが、これがなかなかツボな作品だったのだ。この作家さんの本は『つむじ風食堂の夜』は読んだことがあったが、他は何も知らない。

著者紹介欄を読むと、「クラフト・エヴィング商會」という名義で装幀などの活動もしているらしいが……。

そういえばあの古本屋さんも言っていたな。

ナントカ商會としても活動してて、それがまたすごく面白いことをしていて云々。

……気になる。

 

そんな折、品川駅のPAPER WALLという本屋さんで目に止まってしまった「クラフト・エヴィング商會」の文字。

星を賣る店

星を賣る店

 

 透明なビニールで包まれていたので立ち読みもしないでそのまま買って帰り、自宅にて開いてみると、「なんじゃこりゃ。」びっくり。一気におとぎ話の中に迷い込んだよう。

 

商品目録のようだけれど、そこにあるのは「とりあえずビール」(という名のビール)だとか、「睡魔の枕」(睡魔という小さな悪魔を寝かしつけて睡魔に打ち勝つための小さな枕)だとか「クラウド・コレクション」(雲の瓶詰のコレクション。からのビンが並んでいるようにしか見えないけれど……)といった不思議なものばかり。

 

調べてみると、「クラフト・エヴィング商會」とは、吉田篤弘さんと、奥様の浩美さんのユニットらしい。主に著作の執筆や、装幀などのデザインの活動を行っているというが、活動内容は多岐にわたり、なに屋さんと呼んだらいいのか。ただひとつ言えそうなのは、彼らが作っている作品や商品は、一貫してひとつの世界観を作り上げているようだということだ。

 

この「星を売る店」は2014年に世田谷文学館で開催された彼らの展覧会の公式図録らしかった。えっ、まじでこんな「商品」が置いてあったの!? うわー見たかった。もっと早く知りたかった。

悲しみに暮れながら色々と調べていると、同じく世田谷文学館で、6月に開催される「セタブンマーケット」なるイベントで、同商會もナニカを出品するらしいという情報を手に入れた。世田谷文学館なんて行ったことないし、セタブンマーケットが何なのかもわからないし何が売られるのか見当もつかないが、行ってみることにした。

 

ここまで前置き!

diskunion: 古本と雑貨の蚤の市 セタブンマーケット2016

 というわけで、6月4日、セタブンに行ってきた備忘録をば。

 

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10時オープンのところ、ちょっと寝坊しまして、11時に到着。1時間しかたってないし、まだ大丈夫やろ、と高をくくって行ったところ、作家さんがたの出品した商品は、ほぼ……売り切れて……いました。

クラフト・エヴィング商會の棚にわずかに残っていた本(おそらく作家さんの蔵書を売りに出したもの)をなんとか数冊購入したが、他は何が出品されていたんだろう……。しょっぱなから何しに来たんだ感が漂う。不覚。来年はちゃんと朝起きて行こう……。

 

しかし作家のファンというものがいるんだなあと初めて知った。他にも角田光代さんなど、有名作家さんが出品していたはずなのだが、わたしがついたときにはもう札さえ置かれてなかった。一瞬で売り切れたものと思われる。わたしはこういう文学系のイベントに行くのは初めてだったし、サイン会なるものも、円城塔さんが芥川賞を獲ったときくらいしか行ったことがなかったのだが、世の中、こういうところへ駆けつける、コアなファンがいるものだ。

 

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いま田舎に住んでいるからというのもあるが、もっと人が少ないと思っていた。それがこの混みよう。文学館の外で地域のイベントを同時に行っていたからというのもあるだろうが、文学のイベントにこんなに人がたくさん集まっているということがなんだか嬉しかった。

 

イベントは「古本と雑貨の蚤の市」と銘打たれており、作家さんたちの出品以外にも、個性的な古書店が出店していたり、雑貨屋さん、コーヒー屋さん、お菓子も売られていた。なんともツボを心得たラインナップ。どれもこれもそそられる。

 

一番そそられたのが「百年」という古本屋さんのブースの一角。

普通の本より一回り大きいA4判の薄い本が並んでいて、何だろうと思ってパラパラとめくると、詩だった。そこにあったのはすべて詩集だった。

初めて見た。驚きだった。

確かに、この広い世の中、現代でも詩でお金を稼いでいる人たちはいるのだろうということはなんとなくわかっていた、はずだった。でもわたしが持っているのは萩原朔太郎とか宮沢賢治とか、死んだ人たちの詩集だけで、音楽の世界と谷川俊太郎以外で、今も詩が生きているとは、実在しているとは、思いもよらなかったのだ。

 

あったんだ、こんなところに。

 

素直な驚きだった。

この中から一冊買おうと決めて、何冊もめくって、一つを選んだ。 

翅音―詩集

翅音―詩集

 

 90ページで定価が2,500円もする。最後のページには作家の現住所が記されていた。何が何だかわからない。何が何だかわからないものに出会えたことが嬉しかった。そんな世界が存在したんだ。

 

 

それから、お菓子屋さんで明日会う人たちにお土産を買い、自分用にハワイアン雑貨のブースでアロマキャンドルを買って、2階で開催されていた上橋菜穂子精霊の守り人展を見(上橋作品は大体読んでいるのでめちゃくちゃ楽しめた)、13時を過ぎたころに文学館を後にした。

 

来年も開催されるならまた来たいと思う。次こそは!ちゃんと!10時前には並んで!

それから、最寄り駅芦花公園のお隣、千鳥烏山はスイーツの激戦区らしいので、それと抱き合わせで来るのもいいかも。

 

 

さて、文学館を出て、芦花公園駅へと戻る。セタブンにも出店していた37.2℃(ナナドニブ)というお店が、駅近くの古びた商店街の中にあるというので寄ってみると、夏季限定のかき氷屋さんが出現していた。

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変わり種のかき氷ばかりだったので気になって一つ注文。しょうがと黒蜜!

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氷はふわふわシャクシャクだったけれど、なんとも刺激的なお味。おいしいけど!

どうしてかき氷屋をやっているのだろう。みんな楽しそうに生きているなあ。まぶしい。かき氷屋だけじゃない。不思議な商品を扱うユニットも、個性的な古本屋も、詩人もみんな。

わたしにもこんな風に生きる選択肢があるんだろうか、などと人生について考えながら世田谷をあとにした。

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7月28日追記。

文学館で買った吉田篤弘さんの『おるもすと』という小説の感想を書きました。

honto-no-honto.hatenablog.com